大規模なメーカーから小さなつくり手まで、 ポルトガル最北部・ミーニョ地方の6か所を巡りました。 上の方の黄色いラインがスペインとの国境 |
ビーニョヴェルデをもっと知る!
それが今回の取材テーマのひとつでした。
そもそもヴィーニョヴェルデとは何か。
いや、そもそもポルトガルには
どんなワインがあるのか。
そこからちょっとだけおさらいします。
ポルトガルのワインの歴史は非常に古く、
紀元前のローマ時代から
ワインをつくってきた土地です。
ブドウには土着の固有品種も多くあり、
ポルトガルでしか栽培されていない
極めて個性的なブドウも多い。
だから聞いたことのない名前ばっかりです。
トゥリガナシオナル
ティンタロリス
ティンタバロッカ
ロウレイロ
トラジャドゥーラ
エシュパデイロ
ヴィニャオン
……
なんだか呪文のようですが、
これらは全部ブドウの品種名です。
北から南に縦に長い国土は、
料理のバリエーションと同様、
育つブドウもキャラクターが豊富です。
乾いた土地、南のアレンテージョは 最近他国からも注目を浴びている地域 |
極私的な、とても大雑把なワインの感想を言えば、
たとえば南のアレンテージョでつくられるワインは
ブドウが太陽の光をさんさんと浴びて育ち、
果実味たっぷりの香り豊かなワインが多いように
感じます。
また、中部のドウロ川沿い,
傾斜のきつい山の斜面に貼りつくように畑が広がる
ドウロ地方のワインは、
厳しい環境を生き抜く逞しいブドウの
濃くて強い、濃縮した味わいが楽しめるワインが
多いように感じます。
熟成を重ねて芳醇な味わいに変化する
ポートワイン(とくにヴィンテージのポート!)が生まれるのも、
このドウロ地方のブドウからと
法律で厳しく決められています。
ドウロ地方の奥にあるアルト・ドウロ一帯は、 思わず言葉を飲む壮大な景色が広がっている。 傾斜のきつい山肌にパッチワーク状にワイン畑が連なり、 その景観は世界遺産に登録されている |
ほかにもバイラーダやダォン、リバテージョなどなど、
ポルトガルには
特徴あるワインをつくる地域がいくつもあり、
言ってみれば南北に細長い日本でつくられる
日本酒のように、
地域ごとに、つくり手ごとに味わいもさまざま。
だからポルトガルのワインは
訪ねるごとに新鮮な出会いが待っているのです。
山と川に恵まれた緑あふれるミーニョ地方は とうもろこしなどの作物も豊富に育つ。 昔は各家の小さな畑で食料とワインのためのブドウを 同時に育てていた |
私が取材したヴィーニョヴェルデがつくられているのは
ポルトガル最北のミーニョ地方。
緑(ヴェルデ)生い茂るこの一帯は夏でも涼しく、
土壌も花崗岩が主で水はけがいいので、
糖度の低い、酸が高めのブドウが育つ。
そのため、ワインは爽やかな酸味やフレッシュな香りが
持ち味となります。
アルコール度数が10度前後と低めに仕上がるのも
ブドウの糖度が低いせい。
爽やかでとことんフレッシュ。 ずーっと飲んでも飲み飽きないのです |
また、この地域はもともとそれぞれのワイン畑が小さく、
かつては自分達家族が飲む分だけを
畑でつくっていたという歴史があります。
おのおのが自家醸造で瓶詰めしたワインが瓶内発酵し、
その際に自然発生した炭酸がワインに溶け込んだため
微発泡のワインができあがり、
結果的に、ヴィーニョヴェルデは微発泡ワインとして
知られるようになった、
と言われているそうです。
ところで、今回の取材で私が何より一番じかに感じたかったのは、
ポルトガルの人とヴィーニョヴェルデの距離感でした。
ヴィーニョヴェルデが彼らにとってどんなワインで、
ポルトガルでは実際にどんな風に飲まれているのかを、
もっと現地で知りたかった。
ヴィーニョヴェルデがどんなブドウでどんな風につくられているかという
テクニカルな面ももちろん大事だったのですが、
それよりもむしろ、
どんな料理を食べるときにどんな風に飲むのか、
流行りの味はあるのかなど、
素朴な疑問をいくつも掲げて、
ワイナリーを訪ねました。
「Vercoope」セールスマネージャーのジョゼさん(左)と、 私のワインの先生でもあるカルロスさん |
北部のあちこちにあるワイナリー取材は、
ポルト在住のカルロスに同行してもらいました。
カルロスはワインビジネスを
自身で手掛ける社長であり、
ポルトガルのワインに非常に詳しく、
かつてはポートワインの公的機関でもある
IVP(Instituto do Vinho do Porto)にも
在籍していた人。
私のポルトガル語がつたないので、
英語で通訳もお願いしました。
ブドウの品種や組み合わせを変え、 さまざまな味わいのヴィーニョヴェルデを つくっている「Vercoope」 |
ポルト近郊にあるワインメーカー「Vercoope」。
地域一帯の13のワイン生産者が、
より高い品質のヴィーニョヴェルデを
世界に広めようという志のもと、
1964年に協同組合会社として創立したそう。
ここは「VILA LATINA」という
ブランドのヴィーニョヴェルデを
ブドウの種類や組み合わせ別に多数つくっていて、
比較的規模の大きなところです。
海外輸出にも積極的なこのメーカー、
特にアメリカは輸出全体量の約50%を占め、
次いでブラジル、ロシア、北欧などにも輸出しているそう。
私もなにかの食雑誌で
ヴィーニョヴェルデがアメリカで人気が出始めていると読んだ覚えがあり、
シェアの半分というのもうなずけました。
また、北欧では泡がしっかりある方が好まれるそうで、
ロゼの人気も高いそう。
これは食べ物とのバランスなのでしょうか。
ヨーロッパ全体で見ても
ロゼの消費量も生産量も増える傾向にあるとはよく聞きますが、
ヴィーニョヴェルデもそのひとつなのかしら。
こちらの会社は海外との取引が多いからか、
施設の見学案内も非常にスムーズで
ジョゼさんは英語もしっかり話され、
逆に日本人から見たラベルの感想や味の感想も
いろいろ聞かれました。
なんて答えたかって?
そりゃもちろん「おいしい!」です。
だって実際においしかったし!
個人的には写真左から2番目の、
アルバリーニョとロウレイロのブレンドが一番好みでした。
爽やかさの中にうま味もあって、
料理なしでこれだけを飲んでいても楽しい。
いや、それじゃすぐ酔っ払うから危険ですね。
なにか食べながら飲まないと。
ヴィーニョヴェルデがアルコール度数が低いといっても9%以上はありますから、
うっかりすると二日酔いです。
あ、それはいつもの私だ。
ヴィーニョヴェルデというワインは、
大多数が微発泡ではあるものの、
くくりで言えばスティルワイン、
つまりスパークリングワインではありません。
スパークリングワインは
ポルトガルではエシュプマンテという呼び名できちんと存在し、
やはりさまざまなブランドがあります。
大多数が微発泡ということはつまり、
発泡していないヴィーニョヴェルデもある。
実はこの発泡していないヴィーニョヴェルデこそが、
最近の生産者のこだわりの部分でもありました。
これは後ほど触れます。
でもなあ、発泡していないヴィーニョヴェルデ……。
私はやっぱり、ヴィーニョヴェルデは発泡していて欲しいのです。
それがあるからこそのヴィーニョヴェルデなんですよねえ。
~つづく~
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