2012/10/29

『トーキョーバルネクスト』片手にバルホッピングを!

カバーに写っているワインは、
リーズリングのスペシャルな自然派です!
このところ年末年始の号の撮影ラッシュです。
フリーランスにとって、
忙しい事は
本当にありがたい。

生きる勇気が湧きます(まじめにね)。

なので、
ポルトガルのワイン取材ダイジェスト、
ちょっとお休み中です。
でも、ちゃんと続きを書きますからね。


さてさて、素敵な本ができましたよ。
『トーキョーバルネクスト』
柴田書店さんからです。
編集者のYさん、お疲れさまでした。
私もこれから熟読します!







東京のバル・バール文化って、
多様化っぷりがおもしろい!

つまみ充実系、ピッツエリアだけどバル的、
腕きき料理人やソムリエの小劇場のような
ドラマのある店、女性目線で居心地バツグンなどなど……。

小ぶりな店が増えているのも特徴ですね。
これからの季節、ワインのつまみもさらにおいしくなりますから、
この本を片手に、あなたのお気に入りを見つけて下さいね!

ちなみに私のお気に入りは……
むフフ。
お店で偶然、お会いするかも!?


2012/10/19

ポルトガル料理のレシピin「cakes」

「チーズパリパリ」
先月から
「とりあえずビール!」という
お酒とおつまみの連載を
させていただいています。

ウェブ上の
https://cakes.mu/
というサイト内で、
毎月第2.第4金曜日に
アップしています。



ヴィーニョヴェルデ
「カザルガルシア・ブランコ」



何を書いているのかというと、
好きなお酒と、それを飲みながらつくれる、
かんたんなおつまみの紹介。

普段飲み、家飲み、ときどき外飲みの内容ですが、
安くておいしくて簡単がモットー。

ポルトガルに入れ込んでいる今は、
アイデアの源はポルトガル料理ばかり。
何を見てもそうなっちゃう。

あれがおいしかったから、
スーパーマーケットで買える食材で
再現しよう。
そんな風に考えて、
簡略レシピを考えています。
結構面白い作業です。




ワインはいまのところヴィーニョヴェルデを中心に
いろいろ紹介中。
やっぱり安くておいしいっていう部分が大事です。
毎日のことですから!



「ピピッシュ」
つまみはビール、ワイン、日本酒など
全方位型を目指しています。


適当につくっても
失敗をしにくいような
シンプルなおつまみレシピなので、
分量も適当でできるものが多いです。


左はポルトガルのモツ煮。
ワインによーく合います。







「砂肝の○○炒め」

左はビールもワインもOKの
炒めるだけのつまみ。

ある調味料を使うと、
けっこう新鮮な味になります。












「さくさく天ぷら」
これも、適当につくって大丈夫な
さくさく天ぷら。

しかも、
揚げ油も大さじ数杯程度でできます。

と、こんな感じのつまみ連載、
もし詳しいレシピが気になりましたら、
ぜひ「cakes」
バダサオリと検索してみてくださいね。

次回10/26(金)にアップする
第4回の連載は初の外飲み編。
安くておいしい、
粋でいなせな飲み屋さんを取材しています。
飲みに行かなくても、
行った気分になってもらえるといいなあと思いつつ
レポートしました。

お楽しみに!

2012/10/17

ポルトガル取材 ヴィーニョヴェルデ編 その3

ギマランイシュの
「ADEGA COOPERATIVA GUIMARAES」
の次に訪ねたのは、
ポルトガル最北、
スペイン国境でもあるミーニョ川沿いの町
メルガソにある
「Quinta de Melgaco」
メルガソブドウ農園、
いや、メルガソワイナリー。

メルガソには夕方頃に着いたのですが、
最北ともなると結構寒い!
10月1日とまだ秋がはじまったばかりなのに、
みんなしっかりした上着を着て作業していました。

このメーカーは周辺約500の農園と契約していて、

今は収穫の最盛期。
夕方になっても手摘みされたブドウが
どんどん運ばれてきます。
だからあたりが暗くなるこの時間でも、
トラックがブドウを次々と運んできていました。




ブドウを手摘みする理由はいくつかあります。
まず手摘みだと、機械に比べて
ブドウそのものにダメージを与えにくいから、
結果的にワインの質が良くなる。
また、このミーニョ地方のブドウ畑は
そもそも規模が小さいものが多く、
機械を導入することが物理的にムリ
という面もあるそう。

例えば左はミーニョ地方のある地域の写真ですが、
ぐるっと見渡せるほどの小さな畑の周囲に
ブドウの木が囲いのように張り巡らされ、
そのまん中では、トウモロコシやジャガイモ、
コーブ・ガレガ(ポルトガルでよく食べる結球しないキャベツの一種)
などの野菜類が植えられています。

ひと昔前まではこういう条件下でのブドウ作りが多かったそうです。
ひとりひとりの畑が小さい中でいかに多くのブドウを植えるかという、
苦肉の策だったそう。
しかし時代は移り変わり、
今はそれぞれがブドウ専門の畑を持つようになった。
でも、手摘みの方法は変わっていないというわけ。

マセレーション24時間後の果汁をちょっと味見。
まだまだブドウジュースの段階です。
このメーカのワインプロデューサー
(ワインの味を決める責任者)は
女性。メルガソだけではなく、
各地で女性プロデューサーに出会いました
ブドウを集めたら
醸造所ではブドウの粒がついている
小さな枝をはずす除梗(じょこう)、
さらにブドウをつぶす破砕(はさい)の作業を経て、
皮と果汁と種の混合物がつくられます。
ここまではなるべく早く、
ブドウを酸化させることなく、
大至急の作業です。
それらを一定時間、良い条件のもとで
混合物を漬け込んだまま寝かせま(マセレーション)。

ポルトガルでは、
私が見たワイナリーはすべてステンレスタンクで
マセレーションを行い、
温度管理も厳密に徹底されていました。
タンク内の温度を計る装置は当然標準装備で、
一か所に計器が集められていて常にチェックが可能。
おいしいワインをつくるには
もはや当たり前の機能です。


マセレーションの間に果汁が発酵すると
その熱で果汁の温度も上がり、
ワインが劣化してしまいます。
だから温度管理は非常に重要なのです。

ワインづくりには、

・ブドウの質
・地質と天候
・醸造中の温度管理

この3つがとても大切だと、
どのワイナリーのワインプロデューサーも口を揃えて話していました。

さて、このメルガソのヴィーニョヴェルデは

何が一番の売りかといいますと、
アルバリーニョというブドウです。

アルバリーニョは、ほかのブドウとちょっと扱われ方が違います。

まず産地が限定されていて、このメルガソと、隣のモンサォンでとれたものだけが
アルバリーニョと認められ、ワインボトルにブランド表記することを許されます。



アルバリーニョ100%のエシュプマンテ
(スパークリングワイン)。
泡とともに、リッチな香りが広がる

どこがそんなに特別なのか。

決定的なのが味です。
このブドウは早飲みタイプのものではなく、
寝かせて熟成を楽しんだりすることのできる、
ワイン業界の人の言葉を借りれば
〝ポテンシャルの高い〟ブドウです。

実際、このブドウでつくったワインは

他のフレッシュなものと比べるとかなり芳醇。
グラスに注ぐとアルコールも強く、
香りに芯の強さのようなものを感じるリッチさがある。
あきらかに他との違いを感じます。

アルバリーニョというブドウは、
ポルトガル北部と隣接するスペインのガリシア地方の
リアス・バイシャス地域でも同じように育てられていて、
やはり市場価値の高いワインを生み出しています。






瓶の中で1年間熟成させた
ヴィーニョヴェルデは品のある香り

一概には言えませんが、
1ユーロを100円に換算して例を上げると、
テーブルワインとしてのヴィーニョヴェルデが
一般に1本だいたい300円前後だとすると、
アルバリーニョ100%のヴィーニョヴェルデは
1000円以上のものもあります。
ちなみにガリシア地方でつくられているアルバリーニョの白は
もっと値の張るものもあります。

話は少し逸れますが、

日本のワインはどうしても他国と比べると
値段が高くなってしまいます。
輸入ものが大多数というのが
その大きな理由でしょう。
輸入だと元々の価格に税金や輸送費その他が
イヤでもドンとプラスされますし、
最初からつくられる量が限られている希少品には
当然さらに付加価値がつく。
仕方がないことなのですが、
私たち日本人はこのせいで
ある程度ワインの値が高いのに慣れてしまっている。
だからヨーロッパなどで500円以下のワインを見ると、
大丈夫なの?とちょっと警戒してしまう人も少ない。

でも物価の安いポルトガルやスペイン、

イタリアなどに行くとつくづく感じます。
ワインが日常の飲み物の国では、
1000円以下のワインのバリエーションはかなり豊富で、
そのあたりがデイリーワインの一般価格。
つまり、その価格帯で味を競っているものが多い。
酒屋さんやスーパーマーケットに行けば一目瞭然です。
だから同じ500円のワインでも、
日本で買うのとブドウ産地の国で買うのとでは
かなり意味も内容も違います。

何が言いたいのかというと、
500円でも本当に安くておいしいワインがごろごろあるヨーロッパは、
実に羨ましいなあ、ということです。


話をアルバリーニョに戻しましょう。


つまりアルバリーニョはポテンシャルの高い、
ビジネスチャンスの広がるブドウなのです。
だからこのメルガソやモンサォンの人々が
アルバリーニョを大切にしている理由もよくわかります。
高品位ワインは、市場価値も高い。
いかにおいしい白ワインに育てるかも、
ワインプロデューサーの腕次第です。

メルガソのアルバリーニョ、
南魚沼のコシヒカリ、
大間のマグロ、
明石のフグ、
京都のタイザガニ
(なぜか魚介類ばっかり浮かんでくる……)

産地がブランドになるには、
やはりおいしいという決定的な理由があるということですね。
当たり前のような話ですが、
これって基本的には、
自然からの贈り物なんですよね。
いただきます、という言葉の意味を
あらためてかみしめたくなりますねえ。




血を使った腸詰は味に深みがあります。
塩気はそれほど感じません
さて、夜はこちらのヴィーニョヴェルデを持参して近所のレストランへ。
北部ミーニョ地方の食卓には
腸詰やハムが欠かせません。
席に着くなり前菜の肉類が
どんどん並べられます。

この黒いのは、豚の血を使った腸詰
「ショリッソ・デ・サング」。
真っ黒なのではじめてみる人は
ちょっと驚くかもしれませんが、
こくのあるしっとりした腸詰です
豚の血の一滴まで残らず料理に使うのは、
ポルトガルのみならず、
ヨーロッパでよく見る調理法です。





マイルドな塩気。上に乗っているのはヤギのチーズ

それから生ハム。
北部のBisaroという豚を使っていて
柔らかく、豚肉のうまみと甘味もしっかり。
なんかしょっぱそう、と思いましたか?
いえいえ、これがほど良い塩加減なんです。
お昼どきなら、
パンにこのハムとチーズだけで
十分に満足できそう。








はじめた食べた、皮なしアリェイラの素揚げ!
もう一度食べたい
そして、今回食べたものの中でも
印象的だったのが、
皮なしアリェイラの素揚げ。
皮なしの素揚げは珍しく、
お店のオリジナルだそうです。

アリェイラとは、豚の腸詰を模した
鶏肉とパンを使った腸詰で、
ポルトガルではかなり一般的な食材です。

この腸詰はストーリーがあります。
かつてキリスト教徒を装って
暮らしていたユダヤ教徒が、
自分達が本来食べられない豚肉の腸詰を
日々食べているように見せかけるために、
鶏肉とパンを使って
このアリェイラをつくったそう。
普通の腸詰のように軒先につるして、
私たちはユダヤ教徒ではない、とさりげなくカモフラージュしたと聞きます。

この店ではそのアリェイラの皮をとり、
オリーブ油で揚げていました。
パンと鶏肉をよく練ってつくったアリェイラの素揚げは、
むっちりとした食感とまわりのサクサクがおもしろいバランスで、
香りがしっかりあるアルバリーニョの白にもよく合いました。



鍋は直径約35センチ、深さ約15センチ。3人前です
そしてこの日のメイン。
肉ばっかりだったので、
どうしても魚と米の料理が食べたくなった
私の願いがかない、
「アローシュ・デ・タンボリゥ」
あんこうのリゾットになりました。

かわいいデザインの
北部らしい赤茶の陶器に入って、
登場です。
フタを開けると……








野菜と魚介の風味いっぱいのアンコウ雑炊。
ヨーロッパのはじっこで、
こんなに日本人好みの料理があるなんて!

はい、どうぞ。

トマトや野菜、魚介のスープがたっぷりです。
アンコウも大ぶりに切られた身が
いくつも入っていて、
下の方にはおいしいスープを吸ったお米が
これまたみっちり入っています。
何合分入っていたんだろう、
ああ、聞けばよかったなあ。







料理を持ってきてくれた店主のサビーノさんが
「好きなだけ食べてね、おかわりもあるよ」とにっこり。
ギマランイシュでおかわりの意味を学んだ私は、
もうおびえることはありません。

でも、やっぱり
「おかわりちょうだい」とは怖くて言えません!

~つづく~


2012/10/15

ポルトガル取材 ヴィーニョヴェルデ編 その2

今年もブドウがとれたよ~♪
「vercoope」の次に訪ねたのは、
ミーニョ地方のギマランイシュにある
「ADEGA COOPERATIVA GUIMARAES」
ギマランイシュ・ワイン協同組合です。

ギマランイシュは
初代ポルトガル国王が生まれた
歴史的な町です
以前ひとりで訪ねたときは、
町についてすぐの建物の壁に黒々と大きく
「Aqui Nasceu Portugal
(ここにポルトガル誕生す)」と書かれていて、
いや、正確にはブロックでつくった文字が
建物の壁の高い位置に
並べて取り付けられていて、
妙に印象的でした。

だって、日本の歴史的な土地の建物の壁に
「ここに日本誕生す」
なんて書いてたら、どうです???
インパクト、かなり強いですよね

が、今回はそういった歴史的なものを
一切見ることなく、
郊外のワイナリ―へ直行です。

右はこの協同組合のシンボルマーク。
ブドウを積んでいる人の衣装は、
この地域の伝統的な服装だそう。
結構かわいらしい雰囲気です。
そして私はこういうビジュアルが大好き。
ボトルにこんなマークがあるだけで、
きっとワインに手を伸ばしてしまします。
どんなラベルデザインなのかな~と期待して見てみたら、おや。





こちらのワイン、
結構すっきりした印象のボトルでした。
飲み口もすっきり。
ロウレイロ、アリント、トラジャドゥーラを
バランスよく合わせていました。

この爽やかさは揚げものなんかにぴったり。
やっぱりヴィーニョヴェルデっていいなあ。

でも、あの愛きょうのあるシンボルマークが
もっとアピールされてもいいのに、
という気持ちは抑えきれず。
ビジュアルがかわいいからラベルに使ったらどうだいと、
案内してくれた最高責任者のセケイラさんに
一応言ってみました。
セケイラさんのリアクションは、そうかい、はーなるほどね、
といった感じ。


どうやらあんまりピンときていない様子。
やはりビジュアルよりまずは味なんですよね、
つくり手のみなさんは。


でもでもでも、ビジュアルもなかなか大事なんですよー。
セケイラさん、私の意見も参考にしてー!




さて、買って帰りたいと思ったワイン1号に出会いました。
こちらの「PRACA DE S.TIAGO」ヴィーニョヴェルデのロゼ。
思わず日本語で「これ、いいなあー、欲しいなー」と
つぶやいてしまうほどでした。

私がほほっと楽しく試飲
(口に含んでプッと出すのではなく、
おいしくて本当に飲んじゃいました)していたので、
2人も嬉しそうだったなあ。

エシュパデイロ100%、グンと華やかな香り、
口に含むとイチゴのような甘い香りも感じます。
でもワイン自体は辛口。
スモークのかかったハム類や、
ころもに塩気のある魚や野菜の天ぷら
(ポルトガルでは味つきころもの天ぷらが一般的)などを
合わせたいと思いました。


ちなみにこの協同組合は規模は小さめで、
運営している中心人物は基本的に3人。
周辺の畑から収穫したブドウを集め数本のバリエーションをつくっています。

この日は最高責任者のセケイラさんと、
ワインの味を決めるワインプロデューサーのペドロさんが案内してくれました。
試飲や見学が終わったら、みんなで近所のレストランへランチにバモシュ!
もちろんこちらのワイン持参です。

そしてこのランチが楽しかった。


まずこのお2人、
性格がかなり真逆で
そのコンビネーションが面白かったんです。

情熱的で、
話しにすぐに夢中になるセケイラ(左)さんと、
クールで落ち着いているペドロさん。

セケイラさんは身ぶり手ぶりも大きくて、
「Nao(ナオン)」
つまりノ―をアピールする時の手が
あたりの空気を全部払うかのように
大きく左右にブンブン振る。
それだけで、私はニヤニヤしちゃうんですよね、
あー、ポルトガルの熱いおじさん、
素敵だなあって。
パワー漲ってるなあって。


伝統的な赤のヴィーニョヴェルデの飲み方。
ちいさな陶器のカップに入れて、
縁からワインが伝って落ちる様子を楽しむ

ちなみに写真でペドロさんが手にしている
ヴィーニョヴェルデは、赤です。
ヴィニャオンというブドウ100%でつくられ、
コクもありバランスもとれ、
地元の料理にもよく合う。

ヴィーニョヴェルデの赤は
ポルトガルでも
まだまだ珍しいワインとして捉えられているそう。
「これを買い手のお客さんに試飲してもらうときは、
みなさん覚悟はいいですか? って聞くんだよ」と
セケイラさんも話していました。

どういうことかといいいますと、

ヴィーニョヴェルデの赤、
というよりも
赤ワインがシュワッと微発泡すること自体が
とても珍しいから、
飲んでみて、なんだこれは!とびっくりする人が多いらしい。
確かに、珍しいですもんね、
微発泡の赤ワインは。
イタリアのランブルスコやフランスのペティアンあたりを
知っていれば別ですが、
基本的にポルトガルの人はローカルワインを飲むのが定番なので、
そんな人もそう多くはないようです。
いろんな国のいろんな飲み物を楽しんでいる私たち日本人は、
他国と比べるとむしろ珍しいのかもしれませんね。



とうもろこしの粉を使った黒パン「ブロア」(下)も
北部の名物
私がヴィーニョヴェルデの赤も好きなんだと
彼らに話すと、
へえ~、あんた変わってるね
(とはいわれませんでしたが)という
驚いた表情でした。

どうして好きかというと、
微発泡のお陰でタンニンが
やわらかく感じるんです。
濃いめの味の料理には
やはりほどよいタンニンを感じるワインが
バランスが取れるように思うのですが、
いかんせんタンニンが得意ではない私。
そのタンニン攻撃を、
微発泡の刺激がやわらげてくれるんです。
この、微、というところも大事。
あんまりシュワシュワがきついと、
赤のコクや味わいを邪魔します。

もちろん、使っているヴィニャオンというブドウのよさも
好きな理由。
ギュッと凝縮した干しブドウ的な味わいがあるんです。
ほのかな甘さ。
あくまでほのか、です。
実際はちっとも甘くないですよ。
でも飲むとなんとなく、あたたかさを感じるんです。


私だけで食べるなら、1日かかっても終わりません

で、その赤ヴェルデが
どんな地元料理にぴったりかというと、
右のこちら。
北部のスペシャルメニュー
「アローシュ・デ・カビデラ」
鶏の血のご飯です。
見た感じは雑炊っぽいですね。

以前、コインブラの家庭に
ホームステイしたときにも、
御主人につくってもらったことがありました。
そのぐらいポルトガルでは有名な
地方料理です。

たっぷりのソースは鶏の血を使っていて濃厚。
ワインビネガーが隠し味です。
鶏肉のいろんな部位とお米を煮てあって、
肉も米もいいお味。
ビネガーでマイルドにまとまったスープは、
見た目のパンチに反比例して、案外しつこくないんです。
名古屋の味噌煮込みうどんの汁の方が、むしろ濃いぐらいかもしれません。


それにしてもこのお店の盛りは豪快でした。
笑っちゃうほどです。
直径50センチほどの巨大な深皿にドーンと盛られてやってきて、
なんとお店の人が「おかわりあるからね」ってウインク。
いやいやお姉さん、いくら男3人いるからって、これはおかわりまで到達しませんよ……
と思っていたら、半分終わったところでセケイラさんが
お店の人に「おかわりちょうだい」って。
えっ!
セケイラさん、いいよ、まだ終わってないよ!

ここでやっと理解しました。
つまり、全部食べ終わる必要はないということです。
とくに地方のレストランでは、たっぷり余っていることが
お客が満足した証になるということらしい。
昔堅気のお店ほど、こういう「大盛りでもてなすぞ傾向が強いそう。
残しちゃいけないという教育を受けてきた日本人の私には、
毎回どきどきする習慣です、本当に。

ほかにもヴィーニョヴェルデにばっちり合う料理がありました。


北部でよく見る「ロジョンイシュ」。
これも肉好きにはたまらない料理。

地方によってクミンやパプリカを加えたりと
多少アレンジがありますが、
ほぼレシピにヴィーニョヴェルデを使います。
豚のいろんな部位とレバーなどの肝類などをにんにくやヴィーニョヴェルデなどでマリネし、
アリェイラ(鶏を使った腸詰)やショリッソ・デ・サング(血の腸詰)などを加えて
ラードで炒め揚げたもの。

つけ合わせはナボーラというかぶの葉です。

物静かなペドロさんは実は料理が大好きで、
このロジョンイシュもよく家でつくるそう。
レシピを聞いていたら、
「あのさ、日本ではスシは家でもつくるものなの?」と逆に質問されました。
不意を突かれた質問にびっくり。
そう、実はペドロさんは大の日本食好きで、
わざわざポルトまで車で出掛けて、スシを食べに行くそう。
「名前がよくわからなくてもさ、カウンターの上のいろんな魚を指させば握ってくれるでしょ、
しかもちょっとづつ食べられるし。ほんと、素晴らしいよね。僕は大好きなんだよ」
そんなことを言われたら、日本人の私が有頂天になるのはいたしかたないですよね。
もう張り切って、スシの話をしました。
張り切り過ぎて、鼻の穴が多少膨らんでいたかもしれません。

するとその様子を見ていたセケイロさんが
「僕は一度スシを食べたけど、あんまり好きじゃなかったよ!」と
会話に参加してきます。
それに対してペドロさんが
「それはおいしいスシじゃないからだよ」と
まるで私を代弁するかのような反撃!
すると今度はセケイロさん、目の前のどんぶりいっぱいの鶏の血のご飯を指して、
「僕はたっぷりボリュームがあって、
味がしっかりしたこういう昔ながらのポルトガル料理が大好きさ」と
大きな身ぶり手ぶりで話します。

セケイロさんはケンカ腰じゃないですよ、ちっとも。
でも熱い!
俺はポルトガルの料理とワインが大好きなんだー!
そんな熱いハートに火をつけてしまったようです。

しかしペドロさんも負けません。
「僕はスシもサシミも大好きだよ。ヴィーニョヴェルデにもよく合うよね」
わお、ペドロさん、日本人の私にとって、それはなんと理想的なアンサーでしょう。
ペドロさんはもしかしてワインプロデューサーではなく、
PR専門なのではと思うほどの、
日本人をノックアウトする完璧なコメントです。
うっかり惚れそうになってしまいます。


ポルトガルでデザートに迷ったらプリンを。卵たっぷりです
そうこうしているうちにデザートタイムになり、
4人でしっかり甘いものを食べ、
コーヒーを飲み、
「やっぱりうちのワインはうまいな」という
セケイロさんの満足顔に
みんなでうなずいて(ほんとに!)
お開きになりました。

熱い会話って、私は好きなんです。
そこにはなにか
プラスの気が巡っている気がします。
嬉しくなって、
2人と記念撮影してもらっちゃいました。


日本でもうちのワイン紹介してね!
とセケイロさんに頼まれました。頑張ります!
~つづく~

2012/10/13

ポルトガル取材 ヴィーニョヴェルデ編 その1

大規模なメーカーから小さなつくり手まで、
ポルトガル最北部・ミーニョ地方の6か所を巡りました。
上の方の黄色いラインがスペインとの国境
ポルトガルの微発泡ワイン
ビーニョヴェルデをもっと知る!
それが今回の取材テーマのひとつでした。

そもそもヴィーニョヴェルデとは何か。

いや、そもそもポルトガルには
どんなワインがあるのか。
そこからちょっとだけおさらいします。

ポルトガルのワインの歴史は非常に古く、

紀元前のローマ時代から
ワインをつくってきた土地です。
ブドウには土着の固有品種も多くあり、
ポルトガルでしか栽培されていない
極めて個性的なブドウも多い。
だから聞いたことのない名前ばっかりです。

トゥリガナシオナル

ティンタロリス
ティンタバロッカ
ロウレイロ
トラジャドゥーラ
エシュパデイロ
ヴィニャオン
……

なんだか呪文のようですが、
これらは全部ブドウの品種名です。

北から南に縦に長い国土は、
料理のバリエーションと同様、
育つブドウもキャラクターが豊富です。




乾いた土地、南のアレンテージョは
最近他国からも注目を浴びている地域



極私的な、とても大雑把なワインの感想を言えば、

たとえば南のアレンテージョでつくられるワインは
ブドウが太陽の光をさんさんと浴びて育ち、
果実味たっぷりの香り豊かなワインが多いように
感じます。


また、中部のドウロ川沿い,
傾斜のきつい山の斜面に貼りつくように畑が広がる
ドウロ地方のワインは、
厳しい環境を生き抜く逞しいブドウの
濃くて強い、濃縮した味わいが楽しめるワインが
多いように感じます。


熟成を重ねて芳醇な味わいに変化する
ポートワイン(とくにヴィンテージのポート!)が生まれるのも、
このドウロ地方のブドウからと
法律で厳しく決められています。







ドウロ地方の奥にあるアルト・ドウロ一帯は、
思わず言葉を飲む壮大な景色が広がっている。
傾斜のきつい山肌にパッチワーク状にワイン畑が連なり、
その景観は世界遺産に登録されている

ほかにもバイラーダやダォン、リバテージョなどなど、

ポルトガルには
特徴あるワインをつくる地域がいくつもあり、
言ってみれば南北に細長い日本でつくられる
日本酒のように、
地域ごとに、つくり手ごとに味わいもさまざま。
だからポルトガルのワインは
訪ねるごとに新鮮な出会いが待っているのです。

















山と川に恵まれた緑あふれるミーニョ地方は
とうもろこしなどの作物も豊富に育つ。
昔は各家の小さな畑で食料とワインのためのブドウを
同時に育てていた
そして今回、
私が取材したヴィーニョヴェルデがつくられているのは
ポルトガル最北のミーニョ地方。

緑(ヴェルデ)生い茂るこの一帯は夏でも涼しく、
土壌も花崗岩が主で水はけがいいので、
糖度の低い、酸が高めのブドウが育つ。
そのため、ワインは爽やかな酸味やフレッシュな香りが
持ち味となります。
アルコール度数が10度前後と低めに仕上がるのも
ブドウの糖度が低いせい。









爽やかでとことんフレッシュ。
ずーっと飲んでも飲み飽きないのです

また、この地域はもともとそれぞれのワイン畑が小さく、
かつては自分達家族が飲む分だけを
畑でつくっていたという歴史があります。

おのおのが自家醸造で瓶詰めしたワインが瓶内発酵し、
その際に自然発生した炭酸がワインに溶け込んだため
微発泡のワインができあがり、
結果的に、ヴィーニョヴェルデは微発泡ワインとして
知られるようになった、
と言われているそうです。












ところで、今回の取材で私が何より一番じかに感じたかったのは、
ポルトガルの人とヴィーニョヴェルデの距離感でした。

ヴィーニョヴェルデが彼らにとってどんなワインで、

ポルトガルでは実際にどんな風に飲まれているのかを、
もっと現地で知りたかった。
ヴィーニョヴェルデがどんなブドウでどんな風につくられているかという
テクニカルな面ももちろん大事だったのですが、
それよりもむしろ、
どんな料理を食べるときにどんな風に飲むのか、
流行りの味はあるのかなど、
素朴な疑問をいくつも掲げて、
ワイナリーを訪ねました。


「Vercoope」セールスマネージャーのジョゼさん(左)と、
私のワインの先生でもあるカルロスさん


北部のあちこちにあるワイナリー取材は、
ポルト在住のカルロスに同行してもらいました。
カルロスはワインビジネスを
自身で手掛ける社長であり、
ポルトガルのワインに非常に詳しく、
かつてはポートワインの公的機関でもある
IVP(Instituto do Vinho do Porto)にも
在籍していた人。
私のポルトガル語がつたないので、
英語で通訳もお願いしました。








ブドウの品種や組み合わせを変え、
さまざまな味わいのヴィーニョヴェルデを
つくっている「Vercoope」
最初に訪ねたのは、
ポルト近郊にあるワインメーカー「Vercoope」。
地域一帯の13のワイン生産者が、
より高い品質のヴィーニョヴェルデを
世界に広めようという志のもと、
1964年に協同組合会社として創立したそう。

ここは「VILA LATINA」という
ブランドのヴィーニョヴェルデを
ブドウの種類や組み合わせ別に多数つくっていて、
比較的規模の大きなところです。

海外輸出にも積極的なこのメーカー、
特にアメリカは輸出全体量の約50%を占め、
次いでブラジル、ロシア、北欧などにも輸出しているそう。
私もなにかの食雑誌で
ヴィーニョヴェルデがアメリカで人気が出始めていると読んだ覚えがあり、
シェアの半分というのもうなずけました。


また、北欧では泡がしっかりある方が好まれるそうで、
ロゼの人気も高いそう。
これは食べ物とのバランスなのでしょうか。
ヨーロッパ全体で見ても
ロゼの消費量も生産量も増える傾向にあるとはよく聞きますが、
ヴィーニョヴェルデもそのひとつなのかしら。

こちらの会社は海外との取引が多いからか、

施設の見学案内も非常にスムーズで
ジョゼさんは英語もしっかり話され、
逆に日本人から見たラベルの感想や味の感想も
いろいろ聞かれました。

なんて答えたかって?

そりゃもちろん「おいしい!」です。
だって実際においしかったし!

個人的には写真左から2番目の、
アルバリーニョとロウレイロのブレンドが一番好みでした。
爽やかさの中にうま味もあって、
料理なしでこれだけを飲んでいても楽しい。
いや、それじゃすぐ酔っ払うから危険ですね。
なにか食べながら飲まないと。
ヴィーニョヴェルデがアルコール度数が低いといっても9%以上はありますから、
うっかりすると二日酔いです。
あ、それはいつもの私だ。

ヴィーニョヴェルデというワインは、
大多数が微発泡ではあるものの、
くくりで言えばスティルワイン、
つまりスパークリングワインではありません。
スパークリングワインは
ポルトガルではエシュプマンテという呼び名できちんと存在し、
やはりさまざまなブランドがあります。

大多数が微発泡ということはつまり、
発泡していないヴィーニョヴェルデもある。
実はこの発泡していないヴィーニョヴェルデこそが、
最近の生産者のこだわりの部分でもありました。
これは後ほど触れます。

でもなあ、発泡していないヴィーニョヴェルデ……。

私はやっぱり、ヴィーニョヴェルデは発泡していて欲しいのです。
それがあるからこそのヴィーニョヴェルデなんですよねえ。


~つづく~