2016/06/11

日本初のBIO HOTEL「八寿恵荘」を訪ねて

一般社団法人ビオホテル協会のカタログには、
細かいガイドラインが紹介されています。
認証を受けたホテルは、非常に厳しい規則に従います

BIO HOTEL(ビオホテル)ってご存知ですか?
BIO(ビオ)はオーガニック、つまり自然素材のことを意味します。

ホテルで提供する食事は、肉、野菜、米などの素材から調味料に至るまで、オールオーガニック。もちろん飲み物も。シャンプーや石けん、スキンケアコスメ類などもすべて自然素材。さらに、タオル、ベッドリネン類、施設の建材や内装材までも、可能な限り自然素材を使用し、再生可能エネルギーの積極的な活用を含め、CO2排出削減にも厳格に取り組む志を高く持つホテル。

ヨーロッパでは2001年に、世界で唯一の厳しいBIO基準を規約とするビオホテル協会が有機認証団体のサポートを受けて発足し、ドイツ、オーストリア、スイス、フランス、スペイン、ギリシャの7か国のおよそ100軒が、厳しい基準をクリアしBIOホテルの認証を得ているそう。

ジャーマンカモミールの畑にに包まれた宿と周辺は、
甘いりんごのようなはちみつのような香りが優しく漂っています

そして、日本でもついに昨年2015年5月、北安曇野郡池田町にBIO HOTEL認証を得たホテルが誕生しました。

長野県北安曇野郡にある「カミツレの宿 八寿恵荘」です。
ビオホテルと聞くとちょっとストイックなイメージを持たれるかもしれませんが、この宿はその真逆。なにより、安心感のある親しみやすい名前が、この宿の性格を端的に表していると思います。

八寿恵という名は、ホテルを運営している現社長のおばあさまの名前。ふるさとのように心からくつろいで欲しいと、この豊かな自然の中で暮らした彼女の名を、宿名に冠したそうです。ちなみにこの地は、先代社長の生まれ故郷。北安曇野という土地と自然の力を愛する人達の想いが、時間をかけて宿として花開いたというわけです。

カミツレ、というのも気になります。カミツレはジャーマンカモミールの和名。4000年以上もはるか昔から薬草として親しまれてきた、ハーブの女王です。植物療法が盛んなヨーロッパでは、肌への効用で特に重宝されていて、消炎効果や保湿力が高く、スキンケアには欠かせないハーブです。この宿は、そのカモミールを使って入浴剤やスキンケアラインも開発する会社が運営しています。先代の社長がのどの病気で闘病していたころにカモミールに随分と助けられ、またカモミールの持つ力に心底驚き、それが会社を興すきっかけになったそう。ですから宿は、自社で植えたオーガニックなジャーマンカモミールの広大な花畑に囲まれているのです。


東京駅からJR北陸新幹線「かがやき」に乗って長野駅まで1時間半。そこからローカル感が楽しいJR篠ノ井線に乗ってのんびりゴトゴトト50分。最寄りの明科駅からは、お迎えのバスでホテルへ向かいます。北安曇野の里の美しい緑の景色を楽しみながらバスは進みます。そしていよいよホテルに近づくと、周囲は一面ジャーマンカモミールの花畑。この白い小花が一斉に咲き乱れる光景が、突如360℃目の前に広がるのです。まるでいきなり絵本の中に紛れ込んだかのような、ファンタジックな世界。癒されるなんてもんじゃない、いきなり子供のようにはしゃぎたくなります。

どこまでも!

なにしろ13万株のカモミール畑です。これ、文字で書くと簡単ですが、体験すると全然簡単じゃない! 13万株の畑は8000坪もの広さがあって、散歩気分じゃとても巡り切れないほどです。上下前後左右、手前から丘の上までも、白くて小さなカモミールがぐるり咲き乱れている。もちろんすべてオーガニック栽培。これだけカモミールが咲き誇る花畑があるなんて、想像したこともありません。

可憐だけど、たくましいぞ!

一見小さくて可愛らしい花ですが、近くでじっと見つめると、どれも花びらを思いっきり開き、太陽を浴びて力がみなぎっている。小さくてもパワフルな様子です。それらを眺めているだけで、エネルギーをもらえるし、心が段々元気になってきます。5月中旬から6月上旬が満開の見ごろだそう。

さらに、宿の脇のカモミールの丘をずんずん上っていくと、上の方に最近出来上がったばかりの真新しいツリーハウスを発見!もちろん上ります。

どこを切り取っても、絵になる光景ばかり
梯子を上って、ツリーハウスの中へ。この日は天気が良くてかなり暑かったのですが、ハウスの中は木の自然の調湿効果のおかげか、ほど良く涼しくて快適。小窓から、広がるカモミール畑を見下ろします。んー、吹き抜ける風もいい香り!もうこの小屋から出たくない、軽く昼寝でもしたい気分。

甘い香りはツリーハウスの中にも広がっています

さらに歩いて上の方の花畑へ。この時季は既に収穫が始まっていて、地元の女性たちがカモミールを刈り取っていました。写真の中のどこにいらっしゃるか、分かりますか?

左右それぞれ奥に1名ずつ

お昼に到着しましたので、早速ランチをいただきました。ボリュームたっぷりのカレーは、おかわり自由。素材を吟味した料理が並びます。

お米もルウの小麦もスパイスも、もちろんみんなオーガニック

玉ねぎのみをじっくり炒め、8種のスパイスと小麦を加えた、日本人になじみのあるカレールウ。大豆入りです。ご飯は雑穀をブレンドした炊き立て。ちなみに八寿恵荘では、長野ほまれと夢しなのという2つの品種の米を栽培し、自家製米して使っているそう。そしてびっくりなのが、左上のサラダに入っていたカモミール。生で食べられるんですね、カモミールって!甘い香りの花がサラダに入っていると、それだけで食卓が特別な感じです。

デザートには、カモミールと豆乳のアイスクリーム。甘い香りに豆乳の風味がよく合います。

甘さも口当たりもさっぱり。いくらでも食べられる

それから、この宿には大きな土間があり、立派な羽窯とかまどがあります。薪割りやかまど炊きの体験もできるのです。大人でもつい夢中になってしまう珍しいかまど体験、子供ならきっと、なおさらでしょう。お米が炊けてくるときの香りや、炊き立てをつまみ食いする楽しさは、きっといい思い出になります。

火加減を教わりながら、自分達が食べるお米を薪をくべながら炊くのって、楽しい!


さらに、この宿のお楽しみといえば、カモミールのお風呂。カモミールは肌への効用が優れているというのは先に触れましたが、ここではそのカモミールから抽出したエキス100%がたっぷり入ったお風呂に入れます。花畑の香りがお風呂にも。窓の外にはカモミールの畑も広がっていました。

窓の外の緑が目を和ませてくれる

お風呂や洗面のスキンケアラインナップも、もちろんカモミール100%のオーガニックコスメです。

ここには写っていないのですが、
ヘッドスパ用のヘッドマッサージローションが特におすすめ

夜の食事はお米が主役の和食ベースで、ボリュームもしっかり。採れたて野菜のおひたしやて旬の煮物、カモミールのてんぷら、カモミールコロッケなど、長野をしっかり味わえるメニューが次々と登場します。




もちろん、長野の地酒やワインも楽しめます。唯一、この地酒とワインのみ、オーガニック認証を得ていないものがありますが、それは宿も承知のこと。ここではやはり、長野の地元のお酒を楽しんで欲しいのだそう。ビールはオーガニックのものを取り寄せています。

日本酒もワインも、長野の誇る味があります

そして、この宿にはカモミール畑を眺められる広いデッキがあります。ぼーっとしたり、本を読んだりするリラックスタイムに最適。ロングチェアに寝転ぶと、カモミールの香りと安曇野の里の新鮮な空気を静かに味わうことができます。休みを満喫している気分に浸れます。

すぐにウトウトできちゃいます

ちなみに、安曇野は言わずと知れた蕎麦の美味しいところ。車を走らせると、おすすめの蕎麦屋さんもあります。宿の方に聞いてみてください。とっても親切に教えてくれますよ。

店からの眺めも抜群。「安曇野翁」のおそばもぜひ

個人的にもまた訪ねたい!と強く思った「八寿恵荘」でした。