2012/10/15

ポルトガル取材 ヴィーニョヴェルデ編 その2

今年もブドウがとれたよ~♪
「vercoope」の次に訪ねたのは、
ミーニョ地方のギマランイシュにある
「ADEGA COOPERATIVA GUIMARAES」
ギマランイシュ・ワイン協同組合です。

ギマランイシュは
初代ポルトガル国王が生まれた
歴史的な町です
以前ひとりで訪ねたときは、
町についてすぐの建物の壁に黒々と大きく
「Aqui Nasceu Portugal
(ここにポルトガル誕生す)」と書かれていて、
いや、正確にはブロックでつくった文字が
建物の壁の高い位置に
並べて取り付けられていて、
妙に印象的でした。

だって、日本の歴史的な土地の建物の壁に
「ここに日本誕生す」
なんて書いてたら、どうです???
インパクト、かなり強いですよね

が、今回はそういった歴史的なものを
一切見ることなく、
郊外のワイナリ―へ直行です。

右はこの協同組合のシンボルマーク。
ブドウを積んでいる人の衣装は、
この地域の伝統的な服装だそう。
結構かわいらしい雰囲気です。
そして私はこういうビジュアルが大好き。
ボトルにこんなマークがあるだけで、
きっとワインに手を伸ばしてしまします。
どんなラベルデザインなのかな~と期待して見てみたら、おや。





こちらのワイン、
結構すっきりした印象のボトルでした。
飲み口もすっきり。
ロウレイロ、アリント、トラジャドゥーラを
バランスよく合わせていました。

この爽やかさは揚げものなんかにぴったり。
やっぱりヴィーニョヴェルデっていいなあ。

でも、あの愛きょうのあるシンボルマークが
もっとアピールされてもいいのに、
という気持ちは抑えきれず。
ビジュアルがかわいいからラベルに使ったらどうだいと、
案内してくれた最高責任者のセケイラさんに
一応言ってみました。
セケイラさんのリアクションは、そうかい、はーなるほどね、
といった感じ。


どうやらあんまりピンときていない様子。
やはりビジュアルよりまずは味なんですよね、
つくり手のみなさんは。


でもでもでも、ビジュアルもなかなか大事なんですよー。
セケイラさん、私の意見も参考にしてー!




さて、買って帰りたいと思ったワイン1号に出会いました。
こちらの「PRACA DE S.TIAGO」ヴィーニョヴェルデのロゼ。
思わず日本語で「これ、いいなあー、欲しいなー」と
つぶやいてしまうほどでした。

私がほほっと楽しく試飲
(口に含んでプッと出すのではなく、
おいしくて本当に飲んじゃいました)していたので、
2人も嬉しそうだったなあ。

エシュパデイロ100%、グンと華やかな香り、
口に含むとイチゴのような甘い香りも感じます。
でもワイン自体は辛口。
スモークのかかったハム類や、
ころもに塩気のある魚や野菜の天ぷら
(ポルトガルでは味つきころもの天ぷらが一般的)などを
合わせたいと思いました。


ちなみにこの協同組合は規模は小さめで、
運営している中心人物は基本的に3人。
周辺の畑から収穫したブドウを集め数本のバリエーションをつくっています。

この日は最高責任者のセケイラさんと、
ワインの味を決めるワインプロデューサーのペドロさんが案内してくれました。
試飲や見学が終わったら、みんなで近所のレストランへランチにバモシュ!
もちろんこちらのワイン持参です。

そしてこのランチが楽しかった。


まずこのお2人、
性格がかなり真逆で
そのコンビネーションが面白かったんです。

情熱的で、
話しにすぐに夢中になるセケイラ(左)さんと、
クールで落ち着いているペドロさん。

セケイラさんは身ぶり手ぶりも大きくて、
「Nao(ナオン)」
つまりノ―をアピールする時の手が
あたりの空気を全部払うかのように
大きく左右にブンブン振る。
それだけで、私はニヤニヤしちゃうんですよね、
あー、ポルトガルの熱いおじさん、
素敵だなあって。
パワー漲ってるなあって。


伝統的な赤のヴィーニョヴェルデの飲み方。
ちいさな陶器のカップに入れて、
縁からワインが伝って落ちる様子を楽しむ

ちなみに写真でペドロさんが手にしている
ヴィーニョヴェルデは、赤です。
ヴィニャオンというブドウ100%でつくられ、
コクもありバランスもとれ、
地元の料理にもよく合う。

ヴィーニョヴェルデの赤は
ポルトガルでも
まだまだ珍しいワインとして捉えられているそう。
「これを買い手のお客さんに試飲してもらうときは、
みなさん覚悟はいいですか? って聞くんだよ」と
セケイラさんも話していました。

どういうことかといいいますと、

ヴィーニョヴェルデの赤、
というよりも
赤ワインがシュワッと微発泡すること自体が
とても珍しいから、
飲んでみて、なんだこれは!とびっくりする人が多いらしい。
確かに、珍しいですもんね、
微発泡の赤ワインは。
イタリアのランブルスコやフランスのペティアンあたりを
知っていれば別ですが、
基本的にポルトガルの人はローカルワインを飲むのが定番なので、
そんな人もそう多くはないようです。
いろんな国のいろんな飲み物を楽しんでいる私たち日本人は、
他国と比べるとむしろ珍しいのかもしれませんね。



とうもろこしの粉を使った黒パン「ブロア」(下)も
北部の名物
私がヴィーニョヴェルデの赤も好きなんだと
彼らに話すと、
へえ~、あんた変わってるね
(とはいわれませんでしたが)という
驚いた表情でした。

どうして好きかというと、
微発泡のお陰でタンニンが
やわらかく感じるんです。
濃いめの味の料理には
やはりほどよいタンニンを感じるワインが
バランスが取れるように思うのですが、
いかんせんタンニンが得意ではない私。
そのタンニン攻撃を、
微発泡の刺激がやわらげてくれるんです。
この、微、というところも大事。
あんまりシュワシュワがきついと、
赤のコクや味わいを邪魔します。

もちろん、使っているヴィニャオンというブドウのよさも
好きな理由。
ギュッと凝縮した干しブドウ的な味わいがあるんです。
ほのかな甘さ。
あくまでほのか、です。
実際はちっとも甘くないですよ。
でも飲むとなんとなく、あたたかさを感じるんです。


私だけで食べるなら、1日かかっても終わりません

で、その赤ヴェルデが
どんな地元料理にぴったりかというと、
右のこちら。
北部のスペシャルメニュー
「アローシュ・デ・カビデラ」
鶏の血のご飯です。
見た感じは雑炊っぽいですね。

以前、コインブラの家庭に
ホームステイしたときにも、
御主人につくってもらったことがありました。
そのぐらいポルトガルでは有名な
地方料理です。

たっぷりのソースは鶏の血を使っていて濃厚。
ワインビネガーが隠し味です。
鶏肉のいろんな部位とお米を煮てあって、
肉も米もいいお味。
ビネガーでマイルドにまとまったスープは、
見た目のパンチに反比例して、案外しつこくないんです。
名古屋の味噌煮込みうどんの汁の方が、むしろ濃いぐらいかもしれません。


それにしてもこのお店の盛りは豪快でした。
笑っちゃうほどです。
直径50センチほどの巨大な深皿にドーンと盛られてやってきて、
なんとお店の人が「おかわりあるからね」ってウインク。
いやいやお姉さん、いくら男3人いるからって、これはおかわりまで到達しませんよ……
と思っていたら、半分終わったところでセケイラさんが
お店の人に「おかわりちょうだい」って。
えっ!
セケイラさん、いいよ、まだ終わってないよ!

ここでやっと理解しました。
つまり、全部食べ終わる必要はないということです。
とくに地方のレストランでは、たっぷり余っていることが
お客が満足した証になるということらしい。
昔堅気のお店ほど、こういう「大盛りでもてなすぞ傾向が強いそう。
残しちゃいけないという教育を受けてきた日本人の私には、
毎回どきどきする習慣です、本当に。

ほかにもヴィーニョヴェルデにばっちり合う料理がありました。


北部でよく見る「ロジョンイシュ」。
これも肉好きにはたまらない料理。

地方によってクミンやパプリカを加えたりと
多少アレンジがありますが、
ほぼレシピにヴィーニョヴェルデを使います。
豚のいろんな部位とレバーなどの肝類などをにんにくやヴィーニョヴェルデなどでマリネし、
アリェイラ(鶏を使った腸詰)やショリッソ・デ・サング(血の腸詰)などを加えて
ラードで炒め揚げたもの。

つけ合わせはナボーラというかぶの葉です。

物静かなペドロさんは実は料理が大好きで、
このロジョンイシュもよく家でつくるそう。
レシピを聞いていたら、
「あのさ、日本ではスシは家でもつくるものなの?」と逆に質問されました。
不意を突かれた質問にびっくり。
そう、実はペドロさんは大の日本食好きで、
わざわざポルトまで車で出掛けて、スシを食べに行くそう。
「名前がよくわからなくてもさ、カウンターの上のいろんな魚を指させば握ってくれるでしょ、
しかもちょっとづつ食べられるし。ほんと、素晴らしいよね。僕は大好きなんだよ」
そんなことを言われたら、日本人の私が有頂天になるのはいたしかたないですよね。
もう張り切って、スシの話をしました。
張り切り過ぎて、鼻の穴が多少膨らんでいたかもしれません。

するとその様子を見ていたセケイロさんが
「僕は一度スシを食べたけど、あんまり好きじゃなかったよ!」と
会話に参加してきます。
それに対してペドロさんが
「それはおいしいスシじゃないからだよ」と
まるで私を代弁するかのような反撃!
すると今度はセケイロさん、目の前のどんぶりいっぱいの鶏の血のご飯を指して、
「僕はたっぷりボリュームがあって、
味がしっかりしたこういう昔ながらのポルトガル料理が大好きさ」と
大きな身ぶり手ぶりで話します。

セケイロさんはケンカ腰じゃないですよ、ちっとも。
でも熱い!
俺はポルトガルの料理とワインが大好きなんだー!
そんな熱いハートに火をつけてしまったようです。

しかしペドロさんも負けません。
「僕はスシもサシミも大好きだよ。ヴィーニョヴェルデにもよく合うよね」
わお、ペドロさん、日本人の私にとって、それはなんと理想的なアンサーでしょう。
ペドロさんはもしかしてワインプロデューサーではなく、
PR専門なのではと思うほどの、
日本人をノックアウトする完璧なコメントです。
うっかり惚れそうになってしまいます。


ポルトガルでデザートに迷ったらプリンを。卵たっぷりです
そうこうしているうちにデザートタイムになり、
4人でしっかり甘いものを食べ、
コーヒーを飲み、
「やっぱりうちのワインはうまいな」という
セケイロさんの満足顔に
みんなでうなずいて(ほんとに!)
お開きになりました。

熱い会話って、私は好きなんです。
そこにはなにか
プラスの気が巡っている気がします。
嬉しくなって、
2人と記念撮影してもらっちゃいました。


日本でもうちのワイン紹介してね!
とセケイロさんに頼まれました。頑張ります!
~つづく~

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