2012/05/23

0歳児育児時代からの支え「定本 育児の百科」


いまでもときどき開いています

私は38歳での出産でした。
で、類は友を呼ぶなのか、
周囲には40歳前後の同世代のプレママたち(妊婦を最近こんな風に呼びます)が何人もいます。

だからプレママたちには
「いろいろ教えて」とよく言われます。
で、便利なグッズの話をしたり、
おしゃれな妊婦用の輸入服やベビー服の話をしたり、
親切なリース屋の話をしたり。


でも、本当に話したいのは
そういうことだけじゃないんですね。
一番伝えたいのは、
出産後すぐの0歳児育児は大変だから覚悟してね、
ということです。


しかしそれは私個人の経験で、子育ては個々に違うもの。
実際、0歳児でもそんなに大変じゃない人もいるらしい
(まだそういう人にお会いしたことはないけど)。
だから、ナーバスな時期に余計な心配をさせるのはそれこそ余計なお世話だと思い、
ついこの話題を後回しにしてしまいます。


例えば、景色も気候も食べ物も素晴らしい、
誰が行っても同じように感動できる旅先を案内するなら、
気持ちも晴れやかです。


でも、波乱含みの旅先に向かう人への案内って、はてどうすれば。


いや、やっぱり伝えたい。
プレママたちよ、躊躇を捨て、あえて書きます。
出産直後から数ヶ月の育児は、正直に言って意識がぶっとぶほど大変です。
だから、どうか覚悟して下さい。
パパが積極的に手伝ってくれる環境だとしても、
おっぱいがあるのはお母さん。
だから母親である自分が頑張って乗り越えるしかない。


もちろん、生まれたてのおチビはかわいいものです。
でも、それだけで0歳児育児の苦しみからは逃れられません。
対象は深く愛せますが、
その環境や状況は別。気が遠くなるほど過酷でした。


夜はほぼ一時間ごとに泣き叫び、すやすやなんて寝てはくれません。
自分の意識が寝てるのか起きてるのか朦朧としている中、
赤ちゃんが何を要求しているかなんて、読めるはずもなく、
ただただあやして、おっぱいを飲ませ、あやし続ける。
どんなに難しいクライアントにつきあうより、ヘビーです。
自分は壊れるんじゃないかと思う瞬間が私は何度も。

すやすや眠り、起きるとニコニコしていつも静かなんて、
そんなの幻想に等しい。
ギャンギャン泣いて、1日に十数回もおむつを替えて、
せっかく飲んだおっぱいやミルクも実によく吐き、また泣き叫ぶ。
怖いぐらい母親を疲弊させるのが新生児です。


でも、なんとかやっていけます。シングルの私でも、なんとかやってこれました。
キツイけど、永遠には続かない。今だけの修行みたいなもので必ず終わりがあります。
だから、今まさに0歳児育児で不眠不休の人は、
どうか頑張って欲しい!


そして、周囲の人は必死で頑張っている彼女を、
最大限支えてあげて欲しいです。
あんなに小さい存在でありながら、0歳児は暴君です。
育児は24時間の重労働。女性にとって苛烈を極める時期なのです。


このキツイ数ヶ月を超えると、育児は俄然楽しくなってきます。
女性としての自分自身も徐々に取り戻せます。
気になる体重や体型だって、ゆっくりと戻ります(多少の自意識が必要ですが)。
だからぜひ、0歳児のお母さんたちには頑張って欲しい!


あれ、プレママ向けの話だったのに0歳児ママ対象になっちゃっいました…。


で、話がとても長くなりましたが、
プレママや、0歳時育児に挑んでいる人に
お勧めしたい本があります。


松田道雄先生が書かれた育児の名著「育児の百科」
(岩波文庫・2007年に上中下3冊の文庫になりました)。
これ、1967年から版を重ね、常に改訂版が出されていた育児書の大ベストセラーで、
0歳児から6歳児までの親へのアドヴァイスが載っています
(松田先生の意向により、先生が98年に他界された後は、医学の進歩で変わりやすい
新薬の名前や病気の死亡率だけは外されています)。


0歳児育児のつらい経験の中で見た希望の光、それがこの本でした。


松田先生は、医学者であると共にロシア革命研究者、市民運動家でもあり、
広い分野で活躍された知識人であり文化人だった方。
綴られる文章は、育児書だけではもったいないぐらい人生の示唆に富み、温かいんです


子育てに揺れる親の心に常に寄り添い、激励の姿勢を崩しません。
働く母の憂いにも、優しく語りかけてくれます。
しかも、断定的な物言いは決してなく「あせらなくても大丈夫」という指摘が随所に見られます。
各ページには、まるで病室での医師と親とのやりとりを再現するかのような具体的描写も多く、
多くの親が誤って思いこんでしまいがちな細々としたつまずきにも、
前向きで現実的かつ丁寧な解決案を出してくれています。
アマゾンのレビューを覗いてみても、やっぱり感動の声がたくさん。
特にこの本、父親が読んでも感銘を受けることが多いようで、
男性のレビューもかなりあります。


これは私にとって、もはや育児書というよりも、育児を通した人生の哲学書のような存在です
(もちろん、育児書の内容ですが)。
私はその細やかな配慮にあふれた文面に、たびたび感動していました。
とくに、中巻の11ヶ月から満1歳までの章の「お誕生日ばんざい」にある一説は、
子どもを育てる人だけでなく、すべての大人にあてはまるメッセージがあります。


~人間は自分の生命を生きるのだ。いきいきと、楽しくいきるのだ。~
~赤ちゃんとともに生きる母親が、その全生命をつねに新鮮に、
つねに楽しく生きることが、赤ちゃんのまわりをつねに明るくする。~


全生命をつねに新鮮に、つねに楽しく生きる。
なんて希望に満ちた、人間を応援するシンプルな言葉なんだろう。
松田先生の人間をみつめる目の優しさ。
もし先生がご健在だったなら、ぜひインタビューをしてみたかった。
いったい、どんな方だったんだろう。


そしてこの章の最後の1節は、ダンテの有名な言葉を引用しています。
日々容体が変わりやすい0歳児を不安や恐れを抱きながら育てている親に、
誰より子どもをよく見ているはずの自分に自信を持ちなさい、と勇気づけているのですが、
私にとってこの言葉は、今も生きる上で心の杖のような役割を持っています。


~長い間かけて自分流に成功しているのを、初対面の医者に何がわかる。
「なんじはなんじの道をすすめ。人びとをしていうにまかせよ」(ダンテ)~


ああ、抜粋ではちっとも感動が伝わらないんですよね…。
私の伝え方が中途半端なせいでもあります。


まあそれはともかく。


この本を読むと、私は育児に限らず、よーし人生を頑張ろうとエンジンがかかります。
ですからプレママと0歳児育児を実践中のみなさん、せひ読んでみてください。
1歳児以降(中、下の2巻)からでも、もちろん親には役立つ内容です。


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