パステイシュ・ドゥ・バカリャウ(干し鱈のコロッケ) ポルトガル料理の前菜の定番 |
AKBファンに韓流ファン、
鉄道ファンや歴女(歴史好きの女子)など、
ひとつのものを同じように愛するファンの集いは、
常に熱いものです。
とある夜、代々木のポルトガル料理店『クリスチアノ』では、
ポルトガル関係者やポルトガル好き10名が集まって、
ポルトガルの料理とワインで盛り上がり、
希少なワインもあれこれ楽しみました。
関係者というのは、
Bさん(ポートワインコンテストで優勝歴を持つソムリエ)、
Kさん(ポルトガル好きのチーズスぺシャリスト)、
Nさん(日本ポルトガル協会事務局)、
Tさん(ポルトガル観光貿易振興庁在籍)、
Hさん(ポルトガルタイル工房主宰)、
Kさん(ポルトガル本著者で料理研究家)、
Yさん(テレビ局プロデューサーでポルトガル取材経験者)、
Sさん(東京・大阪のポルトガル料理店店長経験者)、
Sさん(有名ホテルのキャプテンバーテンダー)
それに私の計10名。濃いメンバー、よくぞ集まりました。
初めてお目にかかる方もいらっしゃったのですが、
ワインの力で最初から最後までみんなでしゃべりっぱなし。
好きを語る、良さへの共感を分かち合う楽しさは、お酒の最高のおつまみです。
普段お店で食事をするときは、私、写真は滅多に撮りません。いや、撮れません。
すぐに食べちゃうからです。撮っている間に料理がどんどん変わっていくのが惜しいんです。
でもこの日は『クリスチアノ』の料理をちゃんと撮ってブログで紹介しようと決めていました。
だから珍しく食べかけの料理じゃありません!
(なんてちっとも自慢にもなりませんが、嬉しくてつい)。
メニューを全部撮るわけにはいかないので、
特徴的な干し鱈(バカリャウ)を使った料理をいくつかご紹介。
まず、上の写真は「パステイシュ・ドゥ・バカリャウ」。
干し鱈とジャガイモのコロッケです。
家庭でも、レストランでも、どこでもみかける大定番の料理。
前菜で出されるこの料理がおいしかったら、そのお店はおいしいと言っても過言じゃない。
干し鱈の質や戻し具合が味を決めるので、そう言われるんだと思います。
クリスチアノの干し鱈コロッケは、外はサクッ、中はふわっ。
程よい塩加減と香ばしい香りで、たちまちワインが欲しくなってくる。ああ、何個でもいけそうです。
にんじんがいい仕事してる! |
干し鱈とひよこ豆のサラダです。にんじんも見え隠れしていますね。
干し鱈のうまみがしっかり、食べ飽きないサラダです。
これ、トマトとコリアンダーのサルサがトッピングされていて、シェフの味のセンスの良さが光ってる。
ポルトガルはコリアンダーをいろんな料理のアクセントに使うんですが、
コリアンダーってすごく存在感のあるハーブだから、
時に料理の主役を食っちゃう。
だから、使い方が料理の味のバランスにかなり影響します。そういう観点から言っても、コリアンダーの使いかたがうまいなあ、と思います。
サルサにすることで、コリアンダーが上品に生きている。
ちなみに干し鱈はお店の熟成庫で寝かせた自家製。
自家製ですよ、奥さん(奥さんって誰だ)!
ポルトガルでは干し鱈を作る人なんて滅多にいません。
もちろん、向こうでは街のそこらじゅうで干し鱈を売っているから,
そもそも作る必要なんてないというという根本的な違いもあるのですが、
じゃあみんなおいしく干し鱈を使いこなしているかというと、どうだろう。
私が食べてきた感じでは決してそうではなく、
やっぱりまず良い素材(干し鱈)を選んで、
さらに丁寧な戻し方も大事なんだと思います。
調度良く戻した干し鱈は、そのままでもつまみになります。 味のイメージは、魚の干物の身をほぐした感じ |
着いたそうそう、キッチンの上に干し鱈を戻しているボウルを見つけました(左写真)。
カチカチに硬い干し鱈は、数日かけてゆっくり戻すもの。
でも、戻し過ぎると塩気もうま味も抜けてばさばさした鱈になってしまうから、
結構繊細な作業なんですよね。
ちなみに干し鱈がどんな感じで現地で売られているのかというと…
この硬さ、立派な凶器です |
大きな鱈を開きにした三角形のまま、
たっぷりの塩で漬けこんで、がちがちになるまで干しています。
日本の棒だらより脂分もあって何倍も厚みがあり、大きい。
質の良いものなのはこんな風に一枚ずつ店頭に下がっていますが、
大量に扱う専門店などでは、ノートみたいに重ねて置いて売っています。
魚なのに、ノート扱い! とびっくりしますが、
がちがちに硬いので重ねたってどうってことないんですね。
干し鱈を使った料理のバリエーションは
焼く、揚げる、煮る、炒めると数えきれません。
グラタン風、サラダ、かき揚げと、何にでもできる。
ポルトガルでは365日毎日食べてもレシピがつきないと言われていて、
実際1000以上のレシピがあると言われています。
クリスマスのごちそうも、七面鳥ではなく干し鱈をゆでたもの。
カトリック文化の強いポルトガルならではの食習慣です。
でも、ポルトガルの友人の中には
「やっぱり肉の方が好き」と言う人もちらほら。
お母さんに頼み込んで、肉料理と干し鱈の両方を作ってもらうという人もいました。そりゃ、お母さん大変だわ。
フライドポテトの香ばしさに 干し鱈のうま味がしっかり。 ワインもいいけどこれはビール、かな |
次は「バカリャウ・ア・ブラシュ」。
バカリャウとフライドポテトの炒め物。
これも家庭でもレストランでも必ず作っている大定番料理で、
戻した干し鱈と千切りポテトのフライを炒め合わせ、卵でとじます。
干し鱈のうまみを吸ったポテトが、
卵とからんでしんなりした感じがたまりません。
ちょっと面白いのが、
ポルトガルのスーパーマーケットを覗くと、
千切りのフライドポテトが袋入りで売られている、というもの。
これ、スナックとしてではありません。
あくまでバカリャウ・ア・ブラシュ用。
いろんなメーカーで出しているようで、
陳列棚にずらり並んでいます。
本当に定番料理なんだというのが、
よく分かる光景でした。
袋入りのポテト、撮った写真あったかな…
あ、ありました!これですね(下写真)。
この料理、ポテトは 細ければ細いほどうまい! |
ぼりぼりつまんでみましたが、
素揚げなので、
一般のスナック菓子と比べるとちょっと物足りない。
やっぱり料理用なのでした。
時間がない時やフライドポテトを作るのが手間なときは、
この袋入りを使って料理する人も多いよう。
私もバカリャウ・ア・ブラシュを日本で作りたくて、
まずは干し鱈に近いものを作ろうと
鱈にひと塩して冷蔵庫で寝かせたり、
レンジの低いW数で水分を飛ばしたりして炒めてみましたが、なんか違う。まず、干してないから特有のうま味が出ない。
結局、魚は全く違うんだけど、アジの干物をほぐしたものと炒めたものが一番おいしくできました。
でもそれって創作料理じゃん!
バカリャウ・ア・ブラシュじゃないのよね。
だから、干し鱈を熟成庫を作って自分で作っているという佐藤シェフには
料理人としての心意気を感じるのです。
ちなみに、ショリッソ(腸詰)やハムも自家製です。
こちらもやみつきになる味ですが、その話はまた今度。
芳醇な甘口ワイン、しかもピンク色。 イベントで特に活躍しそうなお酒です |
珍しいおいしいお酒を何本も持参して下さいました。
特に印象的だったのが、ポートワインのロゼ。
ポートのロゼなんて、聞いたことありません。
馬場さん曰く、
数年前から各シッパー(メーカー)が
作り始めたそうなんですが、
なんとも華やかなピンク色と奥行きのある甘さは
食前酒に最適です。
もちろん味わいはポートそのもの。
この春から日本にも入ってきているそうです。
本来の味を楽しむにはストレートが一番ですが、
ポートはアルコール度数が19度とかなり高い。
アルコールがあまり得意ではない女性なら、
炭酸で割って飲むのがいいかな。
見た目にも可愛いし、
チェリーやイチゴを浮かべるといっそう華やか。
カクテルもありですね。
私もこの夏はポートのロゼをストックしておこうかな。
それにしても、本当に楽しい会でした。
ポルトガルに興味のある方々、また集まりましょう!
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