dancyuのyが串!遊び心たっぷりの表紙 |
焼鳥がテーマ。
2015年百花繚乱の焼鳥界から
編集部が厳選した店は、
東京16、野毛が1。
私は東京の店を取材しました。
今回は1ページに1軒ずつの紹介。
見開きごとに撮影するカメラマンが違い、
書き手は1軒ごとに違います。
つまり17名がそれぞれに
お店の紹介文を書いています。
それぞれのページを
一列に並べて読んでみると、
文章も、
写真も、
その人が自然に出てくるものなのだと
改めてひしひしと感じました。
さらにさらに、丁寧に仕事するぞ!
黎明期はジビエ中心、 幕末にはサムライ養鶏なるものが流行っていたなど、 へえ~を連発してしまいます |
さてこの1冊には、
お店のこと以外にも焼鳥について
さまざまな切り口の記事が
豊富に載っていますが、
私が一番好きだったのは、
日本の焼鳥の歴史を紐解く
「焼鳥タイムトラベル」のページ。
いつ、どこで、どんな人がどういう風に
焼鳥を食べていたかを
時代を解りやすくまとめながら、
とっても詳しく楽しく書かれています。
この記事を書いた土田美登世さんは、
近著に「やきとりと日本人」(光文社新書)
を持つ焼鳥ハンター。
土田編集長時代に非常に売れた、 フレンチ、イタリアン(どこだ!本棚で見つからない!)、 中華料理の100年史企画。 今読んでもつい夢中になってしまう内容です |
と誌面では紹介されているのですが、
私にとっての土田さんは、
焼鳥ハンターである前に
好奇心旺盛で取材の馬力が半端ない、
そして大変お世話になった元編集長です。
私が出版社から独立して
フリーの編集・ライターの仕事を
始めたばかりの頃、
「料理王国」という雑誌で
さまざまな取材の機会をいただき、
鍛えていただきました。
自分の撮影した写真を
正式に商業誌で掲載いただいたのも、
「料理王国」の海外レポートが初めて。
あのときは、
出来上がったページを開くのが
緊張で怖かったなあ。
上のビジュアル資料は仮名垣魯文の「西洋料理通」から。 挿絵は、料理人が時計を持って煮る時間を計る様子 |
食のルーツをマニアックに追求する企画を
したかった土田さんが、
フランス料理100年史というテーマを
2号連続で企画したとき、
私はフランス料理界の
食の開拓者たちを調べる担当になりました。
国会図書館に通ってリサーチをしたのですが、
この仕事は本当に面白かった。
調べれば調べるほど、
人間の情熱が
どれだけすごいものを生んでいくかが想像でき、
資料を読みながら、
ひとり図書館でだただ興奮していました。
上野精養軒にあった「西洋料理十二カ月」は 代々の料理長が使い続けていて本当にボロボロだった。 2007年時点で店は創業135年 |
だってそのはじまりは、
まだ電気もガスも遠い存在で
かまどで煮炊きする時代。
明治以前の外国人居留地
(長崎、箱館、横浜、神戸、大阪、新潟)や、
江戸鉄砲州と呼ばれた
現在の築地などの居留地で、
見よう見まねでフランス料理を勉強し始めた
料理人たちが、
西洋料理以上、フランス料理未満の黎明期を経て、
その十数年後には、
外国の要人をもてなす
フルコースのメニューを書けるまでになり、
しかもその内容のレベルが、
後世の料理人が
西洋人が書いたものだと思うくらい
レベルが高かったというのだから。
箱根の富士屋ホテルは、建物自体が文化遺産のよう。 当時の外国人に日本の魅力を伝えようと 趣向を凝らした結果だ。元祖クールジャパン、かな |
計り知れないものがあったに違いありません。
こんなに短い期間に
海外の客をもてなせるようになるまでには
一体どのくらい、
挫折と悔しさと憤りを乗り越えてきたことだろうか。
そんなことを思いながら、
このページを書いたことを思い出しました。
今TBSのドラマで放送されている
「天皇の料理番」の主人公、
秋山徳蔵にももちろん触れています。
ドラマになるほどの人生を送った彼ですが、
その著書「味」のなかで
秋山徳蔵も勤めた東洋軒。 当時の厨房の燃料は重油だったから 室内はすさまじく暑く、よって天井も高く作られていた |
「コック場の様子というものは、どこも同じである。切る、煮る、焼く、揚げる、一応はどこでも似たり寄ったりである。しかしそのなかに、いうにいわれぬ、教えるにも教えられぬ、玄妙な境地があって、修業というのは、つまり、その境地を探り出し、身につけることにほかならない」
と語っています。
いうにいわれぬ、教えるにも教えられぬ、
玄妙な境地を探り出し、身につける。
どんな仕事も目指すところは、
同じなのかもしれません。
それにしても、
玄妙な境地、という言葉は
ご本人が言われたことなのかしら。
言い表しにくいものを十分に言い表す、
とても受け止めやすい表現だと思いました。
昔の書物を読むと、
平易な言葉を組み合わせて
非常に品のある表現が多いなと思います。
そして自分の仕事を反省するのです。
玄妙な境地!憧れます(涙)。
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