2016/11/11

dancyu12月号わいわいワイン

ワイン好きのみなさん、
およびお酒好きのみなさん!
毎日機嫌良く飲んでいますか?

最新号のdancyuはワイン特集ですが、もう手に入れましたか?
未だの方は、早く本屋さん行って欲しいです。売り切れちゃいますよ。


秋の夜長に、読み応えのある1冊
ワイン好きには、いえ、お酒好きにはたまらない内容がぎっしり。
目次を覗いてみれば、一目瞭然。

どっから読んでもおいしい!

ワインを楽しめる評判の新店紹介はもちろん、ワイン好きの熱愛&偏愛家飲みワインや、京都でワインを、とか、オレンジワインについてちゃんと図解で教えてくれたりとか、テロワールって何だっけ?インポーターって誰?的なもやもや気味の情報も、ふむふむと知って、ますますワインがたのしくなる、飲みたくなっちゃいます。

さらに、ワインに合う簡単で気の利いたハンサムフレンチつまみに、日本ワインの過去と現在と未来について。「オルトレヴィーノ」のトスカーナの大鍋料理。見ているだけで、おなかがグーグー鳴ります。空腹時は悶えます。
他にも、ジャパニーズフレッシュチーズ(私的には待ってましたの企画でした!)や、街の洋食を愛する人の、愛を感じるエッセイなどなど。
どれも、ワイン片手にじっくり楽しめます。

そして今回私は、この中の熱愛&偏愛家飲みワイン教えますという企画に、お勧めする人として参加させていただきました。



ご一緒したのは、料理家の冷水希三子さん、ワインライターの葉山考太郎さん、銀座「麦酒屋るぷりん」西塚晃久さん、代々木上原「ルキャバレ」ソムリエの坪田泰弘さん、俳優の石田純一さん。

冷水さんは、だしのような旨味を芯に感じる、素材を生かすお料理を作る方。だからワインもそういう旨味が感じられるやさしいワイン推しとお見受けしました。しかもボトルも可愛いものが多くて、女子受けばっちりなワインがたくさん。なんでも、鎌倉のとある酒屋さんが、冷水さんを自分好みのワインに導いてくれるのだそう。プロを味方につけるお手本だと思いました。

葉山さんは、ご本人も相当に面白くってワインへの目線もマニアックな方なので、ワインもしかり。ザッツ葉山ワールド。今回は、日常ヘビロテ、コスパワインに絞ったとおっしゃっていましたが、800円代のメキシコのスパークリングは、笑っちゃうほどです。値段間違ってますよ。これを見つけたときの葉山さんの驚きと喜びの混ざったであろうびっくり顔を、ぜひ見てみたかったと心から思いました。まさに、探せばある!です。あと、1700円のアルザスのゲヴェルツも、二度見してしまう系でした。そして葉山さん、山田詠美が好きだったんですね。それだけで一緒に一晩飲み明かす自信あります!一緒に語り飲みしたいなー。

西塚さんは日本ワイン推し。それも日常に気軽に飲めて食事との相性も取りやすい、まさに食中酒としてキープしておきたいものばかり。鳥取の北条ワインの白は、野性的で骨太でインパクト大。でも何より印象的だったのは、箱入りとか、一升瓶とか、西塚さんの紹介されるワインはボリュームたっぷり。つまり、毎日飲むんだから、パッケージが大きい方がコスパいいし、という、ワインに日常的な愛をしみじみ感じるラインナップだったこと。お店で他のおすすめも日本ワインも飲んでみたいと思いました。

坪田さんは、さすがのソムリエセレクション。ナチュラルワインオンリーで、私はどれも、今を感じるものが多かった。個人的にストライクもあり、中でもローヌのジル・アゾニーのネジュマの白2015は噛みたくなるような旨味でした。後日、御徒町の「羊香味坊」で同じ造り手の赤を見つけて飲みましたが、赤も相当好み。坪田さん、あまたのワインと出会っている中から、自分の好みと普通の人の喜びそうなポイントの重なるところを探し当てるセンスが、さすがは人気店のソムリエさんと、試飲中も静かに感動しておりました。今度お店に伺って、もっといろいろ教えてもらおう。

石田さんは、ワインの好みが本当にはっきりされている印象。赤はエレガントでボディもしっかりした飲みごたえのあるもの、白は上品で味わいがありながら、軽やかなものという感じ。私の勝手な想像ですが、きっと普通の人ではなかなか飲めないようなハイクラスのワインもそれはそれは飲んでこられた結果、自分が本当に好きだと思えるワインに絞ることができていると思うのです。そのワインライフの軌跡を、ドラマにして欲しい。飲めるドラマ、見てみたいです!

私はといいますと、もちろんポルトガルワインオンリー。当然です。飲んでいるということが、初めて人さまの役に立つ(と願う!)場をいただけて嬉しかったです。9本ご紹介した中で、ヴィーニョヴェルデは5本。定番ではなく、ちょっと珍しく、でも馴染みやすいもの、もちろん価格は抑えめ。そして、ポルトガルらしさを感じるものを選んだつもりです。さりげなく地方もばらしました。

ご参考にどうぞ!もちろんすべて購入できます
この中のいくつかは、12月10日(土)開催の「ポルトガル食堂」タスキーニャでご紹介予定です。
ヴィーニョヴェルデのミニセミナーも一緒に行いますので、ご興味のある方はこちらまでそうぞ。

6名でそれぞれの好みのワインを持ち寄り飲みあうという機会は本当に面白く、発見が山ほどありました。dancyu編集部の皆様、改めてありがとうございました。

今回ひとつ、お勧めするワインを選びながら感じたことがあります。
それは、同じ1人の人間でも、体調や心境、シチュエーションで欲しいワインが違ってくるということ。だから、選ぶって本当に難しいです。

来年の私は、どんなワインを選ぶんだろう。

2016/11/07

土屋鞄製造所の「クリスマスブック」

手に取ったときの紙の質感も心地よい、眺めて楽しい素敵な冊子です
11月に入ると、
途端に年末が近く感じます。

あれもしないと、
これもやらなきゃと、
なぜか勝手に焦りを感じ始めてしまうのは、
日本人的な「~ねばならない」思考の典型。

ちょっと冷静に考えると、
我ながら可笑しくなってしまいます。
もっと真っ先に、楽しむ気持ちが出てこなきゃ、
何のために生きてるのか、わからないのに、ね。


だって11月は、食べ物がさらに美味しくなって、
ストールやブーツのお洒落も楽しくなって、
何より、高い空と気持ち良い晴れの陽を楽しめる季節。
こっくりした赤ワインや、豊潤な白ワインも、よりおいしく感じます。
あ、あったかい鍋も旬!


クリスマスシーズンの幸せな空気が、
さりげなく描かれています
さらに12月は、仕事納めばかりがまっている訳ではありません。
クリスマスにまつわるイベントや集まりも楽しい時期。
大切な人に贈るギフトを考える時間も楽しみたい。

そんなクリスマスシーズンの空気を先取りできるカタログ冊子が、
土屋鞄製造所から出ている「クリスマスブック」です。

小池ふみさんの温かみがありセンスあふれるイラストでクリスマスシーズンの景色が描かれ、
大人向けの絵本のような仕上がりになっています。

この冊子、ショップで無料でいただけますし、ウェブでの申し込みでもお手元に届きます。

お部屋に飾りたくなる可愛さです。






タスキーニャ(居酒屋)スタイルでいろいろなポルトガルワインを飲む会に、
遊びに来ていただいたときの写真です。
これは締めのごはん。白いフェジョアーダをかけていただきます


また、冊子の中面にあるforSMILEというコーナーでは、
私の「ポルトガル食堂」でのワンシーンや、ギフトについてのお話などを掲載いただいております。

いつものガハハ笑いの私が、こんな可愛い冊子に載っているのは気恥ずかしい限りですが、
ぜひお手に取って見てください。


そして年内最後、
12月のポルトガル食堂は、
いつもとちょっと趣向を変え、
ヴィーニョヴェルデの試飲会&タスキーニャ、とします。
今回はヴィーニョヴェルデ協会の協賛となり、最初にヴィーニョヴェルデの簡単な説明を聞いていただき(ワインを説明するのは私なので、実質いつもとあまり変わらないかも…)、4~5種のヴェルデをそれぞれご紹介し、試飲いただきます。
そのあとは、いつもどおりに食事とお好きなグラスワインをお楽しみいただきます。
そして今回は、ヴィーニョヴェルデ協会特製のグリーンのノートがお土産です!
お一人でも、お友達と一緒でも大丈夫。気軽にご参加いただけます。

お申し込みはこちらまでどうぞ。

2016/11/02

MilKJAPON WEBで連載 子どもと一緒に食事が楽しめるレストランガイド

MilK JAPON WEBには、
お洒落好きなパパママに響くニュースやコラムがあります
外で食事を楽しむ時間を大事にしていた食いしん坊の大人ほど、いざ子どもが生まれて親になると、子どもと一緒に食事を楽しめる場って、実はなかなか見つけにくいってことをしみじみ感じる。

女性も男性も、ママやパパになったからって急に味覚は変われないし、
たとえば日曜日の夜などは、ときには簡便なフードコートばかりじゃなく、子どもがいても、食事そのものをきちんと楽しめる、ちゃんと料理を味わえる所に行きたいのです。

そんな思いを叶えてくれるキッズフレンドリーな料理店の紹介を、
パリ発キッズ情報誌の日本版「MilK JAPON」WEBにて、
9月より連載しております。

どんなお店が紹介されているのか、気になる方はぜひチェックしてみて下さい。

2016/11/01

天草にて「南蛮菓子セミナー」開催しました

先週、熊本県の天草を訪ねました。
親子イルカの天草エアラインに乗って

地元のお菓子メーカーや旅館、
レストランの料理人などプロの方々と
天草ならではの南蛮菓子を考える
「南蛮菓子セミナー」に
講師としてお招きいただいたからです。

天草を訪ねるのはこれで4度目。
最初は10年前で、個人的に島の歴史に興味があったので、レンタカーで観光気分で回ったのがきっかけでした。
2泊3日の短い旅でしたが、忘れられない景色がたくさんありました。海沿いに干しだこがずらりと並んぶ素朴な風景もありながら、ふとしたところに建つ古い教会の佇まいが、どこか異国情緒を醸し出す、とても印象的な島でした。

それ以降、天草にはご縁があり、取材で何度か訪ねています。
いつ来ても景色が素晴らしいし、食も豊か。そして、お仕事で知り合う方々も、気持ちの良い方ばかりです。何度来ても、心から楽しい。でもいつも仕事でそそくさと帰らざるを得ないので、
いつか夏の天草の海で、思い切り遊んでみたいなあ。




世界初の地図帳「世界の舞台」より。オランダ人オルテリウス刊行
今回セミナーでお話ししたのは、
南蛮文化が栄えたころの天草と南蛮菓子の関係についてや、南蛮菓子の元であるポルトガルの菓子、修道院菓子などについて。

南蛮文化と聞くと、長崎などが真っ先にイメージされがちですが、当時天草は、南蛮文化の重要な拠点になった場所でした。

左の地図は、1595年にイエズス会士のルイス・テイシェイラというポルトガル人が作図した、日本を単独で描いた世界初の日本地図。
カトリック布教活動を進める彼らにとって、きわめて重要な地名として、天草のCutama久玉、Conzura上津浦、Xiqui志岐が示されています。当時天草が、南蛮文化が浸透した特別な場所だと言える、大きな証のひとつです。





天草コレジヨ館に400年以上の時を超えて現存する、
グーテンベルクの印刷機で刷った本。
羊の皮の装丁で、風格あり

そして、なんといっても天草が誇れる歴史的事実は、コレジヨ、つまり、今で言うカトリックの大学があったことです。

日本で唯一、もちろん初のインターナショナルスクールです。もともと大分でスタートしましたが、当時の情勢からひとところにはいられず、南島原を経て天草へ移ってきました。

当時このコレジヨには、59名もの生徒が学んでいたといいます。しかも、生徒の中にはポルトガル人6名、イタリア人も1名いたという記録が残っています。また、ポルトガル、スペイン、イタリアなどユーロッパ各地を訪ね、8年間の長い旅を経て帰国した初代スーパー帰国子女の天正遣欧使節の4人も、帰国後はここ天草のコレジヨに入学し、さらに学びを深めていました。日本語、ポルトガル語、ラテン語が飛び交う環境だったのでしょう。

教育内容もまた大変充実していました。ラテン語、ラテン文学、日本文学、キリスト教、仏教、地理、算数、唱歌、楽器、弁論、説教、さらに実習科目として、油絵、水彩画、銅版画彫刻、印刷術、オルガン製作、時計、天文器具製作。

さらにここでは、天正遣欧使節らが持ち帰ったグーテンベルクの印刷機を用いて、平家物語やイソップ物語などの本を次々と印刷し、それらを教科書としても使っていました。しかもその刷り部数が凄い。当時他のヨーロッパで1冊の本につき、300~500部が平均的だったところを、天草のコレジヨでは1500~3000部も刷って製本していたそうなのです。その熱気たるや。さぞこの場が、熱い想いに満ちていたのではないか。

だって大変ですよ、この世界初の原始的な活版印刷機で、本を1冊作るということは。
まずは内容の吟味や文章を作成するという大仕事がありますし、さらに実務の印刷や製本も大変です。
実際に、当時の印刷機を復元した機械を触ってみましたが、決して軽いもんじゃない。文字を組むのだってひと苦労、もちろんインターナショナルスクールですから、日本語で組んではいません。すべてポルトガル式ローマ字です。ようやく組んだ版にインク(当時は墨に亜麻仁油を混ぜた)を塗るのも、紙を置いて版画のように押し当て、さらに上から圧をかけて時間をかけて印字し、紙を取り出して乾かすのも、手間も時間もかけなければできないことばかり。きっとこの本を作ることに携わった信者たちは、誇らしさのようなものを感じながら、次々と天草本を作っていったのでしょう。

よく、優秀な大学がある土地は学園都市として発展すると言いますが、当時の天草も、地元のカトリック信者の多さも(島民の約8割が信者でした)相まって、不安定で残酷な戦国の世にありながら、日本の中でもかなり独特で、アカデミックな雰囲気が少なからずあったのではないかと、私はつい想像してしまいます。

血で血を洗う戦国時代に、重い年貢を課されていた庶民の生活は、物質的には非常に貧しいものだったと当時を記す文献には記されていますが、信じる何かがあった人びとの心は、殺伐とした世の中にあっても、少なからず豊かだったのではないかと思えてなりません。


ポルトガルの食事会でいただいた、
半生パオン・デ・ロー

南蛮菓子については、カステラ(ポルトガルではパオン・デ・ローと呼ぶ)、ボーロ、金平糖など、日本に残って独自に進化した菓子をはじめ、江戸時代の文献には名前だけ残ったものの、日本には材料がなくて浸透しなかったもので、ポルトガルには今も存在する菓子など、さまざまな例を上げてお話ししました。

16世紀当時、日本で菓子に当たるものは、茶に添えられる点心のようなもので、木の実や味噌をつけた餅などが主だったよう。
饅頭も、当初は野菜などが入っていて、小豆の餡が入るようになったのはもっと先のこと。
砂糖を使った菓子も全く存在しなかったわけではないけれど、それを食べられるのは、ごく一握りの貴族階級や権力を持つ武将など、いわゆる富裕層だけだったのです。

ですから、砂糖や卵を使った夢のように甘くて黄色くて栄養豊富な南蛮菓子は、一般の日本人にとって味覚の衝撃、大事件。まさに、第一次スイーツ革命だったのではと思います。






アヴェイロという町の最中のような菓子、
オーヴォシュ・モレシュ・デ・アヴェイロ

実際、菓子は布教のために使われる側面があった一方で、イエズス会士のルイス・デ・アルメイダなどが指揮した病院で、栄養食として菓子が与えられたという伝えもあります。

また信仰と菓子は、宗教儀式や祝祭の場でも密接な関係を持ち、
切っても切り離せないものです。

例えば、今もポルトガルのアヴェイロという町で愛されている右の写真の修道院菓子は、最中の皮のような部分が聖餅、つまりキリストの身体を表すオシュテアの材料である小麦粉と水で作られています。中は、卵黄とシロップ(砂糖と水を煮詰めたもの)で作った卵クリームが入っています。
ちなみに、この黄色くて非常に甘い卵クリームこそが、
ポルトガルの修道院菓子の基本になるものです。

貝殻や魚の形を模しているのは、この町が昔から漁業で栄えた土地だから。
最中によく似たこの菓子をポルトガルで初めて見たとき、
私はどうしても、和菓子との縁を強く感じざるを得なかったのです。
近くて遠い、南蛮菓子!

と、このような南蛮菓子のお話を、
セミナーではいろいろとさせていただきました。
天草での南蛮菓子プロジェクトは始まったばかり。
これからも、微力ながらお手伝いさせていただきます。

それにしても、セミナーでお話しするのっていつも緊張します。
終わると、反省点ばかり。
天正遣欧少年使節(てんしょうけんおうしょうねんしせつ)がどうしても言えず、
3回以上噛みました。
これから毎日唱えようかな。

改めて、天草宝島観光協会のみなさま、
セミナーにご参加いただいた天草の事業者のみなさま、
素敵な機会をいただき、ありがとうございました!